ん?何だ?
と思っているうちにいきなりカナデが向かい合わせに俺の膝を
またいで、そのまま座ってしまった。
驚きのあまり目を見開いて両手を顔から離すと、
すかさずカナデの細い両腕が俺の首に巻きつく。
そして俺と同じ顔がどんどん近付いてきて、唇と唇が触れ合った。

昨日のキスより少し長い。
でも別に動くわけでもなく、ただ黙って押し当てられているだけだ。

……やっぱりカナデの唇は柔らかい。
でも俺達は双子だから、もしかしてカナデも同じ事を思って
いるのだろうか。
そうだったらちょっと嬉しいかも(?)

そんな事を考えているうちにゆっくりとカナデが離れた。
頬が少し赤い。


いまだカナデの顔は俺の目の前15センチぐらいにあって、
腕も首に巻きついたままだ。
今の出来事が理解しきれない俺は、俺の膝に座っているせいで
いつもより少し高い所にあるカナデの目をただ見つめる事しか
出来ない。

「昨日も今日も、いきなりキスしてごめんね。でも我慢できなくて。」

我慢?何の我慢だ?

「……さっきヒビキが言ってた事だけど、
 俺もヒビキに対して全く同じ事思ってるんだよ。
 ヒビキが彼女作るなんて絶対嫌だと思ってるし、
 誰かと二人で過ごすのも許さない。
 誰かがヒビキに触れようものなら、俺はそいつを殴っちゃうけどね。」

といってフフッと笑う。

「この気持ちが何なのか、全然わからない?
 好きってこういう気持ちじゃない?」

好き?

「そりゃあ俺は昔からカナデが好きだぞ?
 でもそれは家族だし双子なんだから当たり前だろ?」

俺がそういうと、ふぅ〜とため息をつきながら、
ホントに鈍いんだから、とか言ってる。
俺は鈍いのか?
でも俺が言った事は間違ってないと思うんだが……

「ねぇヒビキ。ヒビキは俺以外の男でもキス出来るの?」

「んなの出来るわけないだろ?
 何で男同士でキスしなきゃなんないんだよ。」

当たり前だろ?
何が悲しくて男と……って、あれ?

「じゃあさ、昨日とさっきのキス、どう思った?
 俺達は男同士で血の繋がった双子だよ?気持ち悪くなかった?」

「……全然気持ち悪くなかった。
 と言うよりむしろ気持ち良……ゴニョゴニョ

思わず正直に答えてしまって間違いなく赤くなっているだろう俺に、
カナデはふわっと微笑んだ。
何でこんな可愛い顔が出来るんだろう?
でも同じ顔なんだから俺にもこういう表情が出来るって事か?
……想像したくない。

「離婚した後時々ヒビキの様子をこっそり見に行ってたんだ。
 人と話すのが苦手だったヒビキが学校でうまくやっていけるか
 心配で。
 案の定いつもヒビキは一人でいた。
 何とかしてあげたいと思ったけど、母さんにも内緒にしてたし
 俺が影で何かしたってわかったらヒビキのプライド傷つけちゃうし。
 だから歯痒かったけどただ黙って見てるしかなかった。
 そんなんで、最初はホント純粋に兄貴として心配だっただけ
 だったんだよ?
 でも中学2年の時、ヒビキのキスシーンを見てから
 おかしくなっちゃって……」

カナデはそこまで話して、そっと辛そうに俺から視線をそらした。
カナデが俺の様子を見に来てた事は全く知らなかった。
ちょっと驚いたが、それだけ心配してくれていたのがわかって
すごく嬉しい。

でも俺のキスシーンって……